歯科医の先生が著者の一冊ですが歯の健康を保つというレベルではなく、口の健康が身体の健康そのものに大きな影響を持つというところが、とても新鮮であり感銘を受けました。林先生のその他の著書を拝見すると、興味深い作品が沢山ありますね。『いい歯医者 悪い歯医者』『歯医者の言いなりになるな! 』『子どもの歯並びと噛み合わせはこうして育てる』『歯科医は今日も、やりたい放題』業界のレジスタンスのような存在だと勝手に妄想してしまいますが、ぜひ読んでみたいと思いました！

インプラントのこと、入れ歯のこと、咀嚼システムのことなどがよく理解できました。そして、何より歯医者さんが歯だけの医者ではないことを知りました! この本を読んで、歯の健康とあわせてボケ防止にガムを噛むようになりました。

「自分の人生のために健康があり、健康のために人生があるのではない。自分の人生のために医学があり、医学のために自分の人生があるのではない」著者の主張をまとめると、こんな感じであろう。医学・健康・統計（エビデンス）を無批判に素晴らしいものとして〈信仰〉している人には、思考を広げるきっかけになり得る本だと思う。「自分の人生という目に見えない主観的なものをもっと大事にしてもいいのでは？」という医学側からの声かけに、ホッとする人も多いのではないか。一方、昨今は0か100かで物事を考える人が多いため、医学・健康・統計を得意げに全否定する者や、自分の好き勝手にやり出す無法者が生まれるのではないかとも懸念する。医学・健康・統計という考え方も、歴史的・社会的にそれなりの意義を持っていたし、人生の選択肢として存在するという旨を、どこかで言及しておいてもよかったと思う。読後感としては共感半分、懸念半分といったところであった。

あんまりこういう視点で書かれたものを読んだことがなかったので、なにしろ新鮮だった。新鮮に感じた理由はやっぱり「健康のためなら死ねる」マインドが、私たちの社会ではとても根強いからなのだろう。筆者の指摘に頷ける部分が多い一方で、文体のトゲトゲしさが気になってしまった。これを云う（世に問う？）ための覚悟だったり、健康至上主義的な現状に苛ついているということなんだろうか、などと想像してみたり。

教えられることが多く、目からうろこの考え方ばかりでした。間違った健康意識を　持っていたことに気づきました。少しずつ少しづつ読み進めていけます。

ありがちな医師の押しつけではなく、別角度からの意見が気持ち良い

著者のユニークな経歴から医療に対しての新たな視点を期待して早速購入して拝読いたしましたが、複雑な気持ちで読了いたしました。共感できる部分が多くあった反面、（特に私の専門分野においては）論文の読み間違いからでしょうか、本書での結論に疑問がある項目も見られました。行き過ぎたエヴィデンス信仰に警鐘を鳴らす必要は私も感じます。しかし論文の趣旨とは違う結論を導き出してしまうのは違います(大脇先生、辛口で申し訳ありません)。治療の選択を患者自身に委ねる、決めるのは患者さん自身という根本思想には深く共感します。そしてそのために我々専門家、専門医がいるとも思うのです。最も危惧するのは、主観的にすぎる結論は患者さんから適切な知識を得る機会を奪うことになりはしないかということです。患者さん本人にとって病気は確率で罹患するものではなく罹患するかしないかのいずれかです。罹患する確率が低いからその病気を軽く見ていいと誤解されるのはとても危険なこと。救急搬送されて初めて疾患が致命的な状況を起こしうることを身をもって理解される方も多くいらっしゃる中で、予防し得たたかもしれない命が(治療中断、不定期受診の結果)救命救急の現場で潰えていくのを見るのは辛いものです。この本を読むことで特に予防医学に対し大いなる誤解や不信を抱かれる方が出るのは決して大脇先生の意図するところではないはず。そうなって欲しくないと切に願います。

著者がすごい量の論文を読んでるのが伝わってきます。理Ⅲコワ。それでいて言葉が平易なのは驚きです。ただし、議論は全く単純なものではありません。明らかに一般向けの書きぶりですが、内容は公衆衛生の参考書になってもいいような本です。狭い世界で働いていると、「できるだけ多くの人を救う」という思想が染みついて、なんだかとっても肩が凝ります。この本はその固い思想に少し、風穴を開けてくれます。現場の若いナースの中には、「健康診断や保健指導にはさほど意味がない」という指摘の辺りで、嫌悪感がこみ上げてくる人もいるでしょう。すくなくともむかしの私はそうでした。「私たちの苦労には意味がある」「患者を教育することは私たちの専門性」と教えられて育ってきたからです。看護教育は宗教的な性質を持っていたりしますし、わたしもそうだったのかな。でも実際、健康教育はなかなか成果が上がらないことが知られるようになってきました。公衆衛生の先生に、「成果がでないとわかっているのに、なぜ患者指導をしなければならないのですか」と聞いたことがあります。先生は「それは、それ以外の方法が限られているからですよ」と言いました。この本を読んでいると、そのときの何とも言えない切ない気持ちがよみがえってきます。そして、そうだろうそうだろう、と読み進めていくうちに、今度は認知症や優勢思想のくだりが始まります。またまた「ムムっ」と抵抗感がこみ上げます。最大多数の最大幸福を突き詰めていけば、「最大」の中に入れない人はどうなるのだろう、ということを考えて、なんかしみじみしながら読み返しています。。なにがいいたいかというと、とても考えさせられる本だということです。大脇先生の次著も楽しみです。